【虹の女神(2006)のネタバレ・感想】岩井俊二テイストのエモさが詰まった映画

虹の女神の何がいいって、上野樹里が出演しているところです。

上野樹里の演技力の高さは見上げたもので、映画の主人公そのものになってしまいます。

しかも見た目も雰囲気もはつらつとしているのに、なぜだかもの悲しさを彼女から感じてしまうのです。作品をワンランク上に押し上げる存在。

彼女の出ている映画にハズレなし!

そしてもう一点。

岩井俊二が今作では監督ではなく、プロデューサーにとどまっているのが実にいい。

※監督は熊澤尚人さんですね。

岩井俊二が監督まで務めてしまうと「スワロウテイル」「リリィシュシュのすべて」のように分かる人には分かるけど、分からない人には全く分からない作品になってしまう。

クセの強いパクチーのような映画になりがちですが、今回は監督を別の人が務めることによって、岩井俊二テイストを残しつつも、非常に見やすい映画として完成しています。

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虹の女神のあらすじ

智也はある日、大学時代の友人であるあおいが飛行機事故で命を落としたことを知る。

智也にとってあおいとは何だったのか、またあおいにとって智也とは?

2人が迎えた結末は悲劇だったのか、それとも……

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虹の女神の感想:とにかくエモい

まず、冒頭の智也(市原隼人)があおいに虹を見ながら電話しているところがエモいと感じました。

実は電話の直後、あおいは飛行機事故でこの世から旅立ってしまうのですが、そんなことも知らずにいつもの調子でふざけて電話する智也。

墜落する直前の飛行機の中という非日常空間のあおいと、自分の住むアパートで虹を見つけて電話する日常まっただ中の智也の対比がなんとも切ない。

墜落する直前、智也のどうでもいいメッセージがあおいの救いになったと思いたい。

演出がエモい

虹の女神には、ホルストの木星が劇中に挿入されています。

葬式が終わって、智也があおいの家族を空港まで送った帰り道にも流れます。

ちょうど現在と過去の回想をつなぐ役割をしているといえるでしょう。

ホルストの木星のイメージは人それぞれだと思うけど、私は不思議でどこかこの世のものではない感じをうけました。

もうこの世界にはいないあおいとの記憶に引き込むには、ぴったりな曲です。

また、とにかくキャストの演技が自然。

その自然さが、「この物語は自分の身近に起こった事じゃないか?」と錯覚させます。

あおいの家族が車から流れるラジオに耳を傾けて思い出話をする場面、樋口(佐々木蔵之介)の「あおいに会社辞めてアメリカ行けってそそのかしたの誰か知ってる?……俺。ご両親に内緒な」というセリフも妙にリアリティがありました。

虹の女神の解説:全編通して伝わったこと

智也とあおいはお互いが間違いなく大切な人でした。

あおいが智也に恋愛感情を抱いていたのと対照的に、智也はあおいに恋愛感情があったかは定かじゃありませんが、それでも人生に欠かせない人だったはずです。

でも、気づいたところでもう遅いのです。あおいはこの世にはいません。

一方、あおいはハッキリと智也への恋心を自覚するも、伝えないまま旅立ってしまいました。

ラブレターに智也が気づいても、自分はもうこの世にはいません。

あおいもまた遅かったのです。

虹の女神はどこにでもある青春を描きだすと同時に、失って二度と取り戻せないものの儚さを描いています。

おまけ:虹の女神のロケ地について

虹の女神であおい達が通っていた大学は、成城大学です。

これは監督の熊澤が成城大学(経済学部)出身であることと、自身が各大学のキャンパスをくまなく回った結果「この映画のロケは成城大学しか考えられない」と思ったからだそう。

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%B9%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%A5%9E

また、撮影の大部分は足利市で行われました。

中でも有楽公園では、あおいと智也のキスシーンもあった「END OF THE WORLD」の撮影場所となったのでファンは注目の場所です。

最後に

今回は『虹の女神 Rainbow Song』についての感想でした。

「岩井俊二と上野樹里の組み合わせはもう二度とないかも」と思うので、貴重な作品だったと思います。

市原隼人はデビュー作となった「リリィシュシュのすべて」で、ガッチリ岩井ワールドを演じてましたね。

虹の女神の全編通して伝わってくる儚さが、好きな人にはたまらないんじゃないかと思います。

何度も見返したくなる作品でした。

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